漫画『天才バカボン』の歴史:「これでいいのだ!」のナンセンス・ギャグ
『天才バカボン』は、「ギャグの王様」こと赤塚不二夫によって生み出された、日本のナンセンス・ギャグ漫画の金字塔です。主人公のバカボンのパパを中心とする野原一家(バカボン、ママ、ハジメ)と、個性的な脇役たちが繰り広げるハチャメチャな日常を描き、赤塚不二夫の代表作となりました。
1. 誕生と初期連載(1967年〜)
ライバル誌からの熱烈なオファーにより、作品は誕生しました。
連載開始 (1967年): 1967年4月、当時『週刊少年サンデー』で『おそ松くん』が大人気だった赤塚不二夫氏に対し、『週刊少年マガジン』(講談社)の編集長が新作を熱心に依頼したことがきっかけで、連載がスタートしました。
当初の掲載誌は『週刊少年マガジン』です。
作品の特徴: 主人公が少年ではなく「バカボンのパパ」というおやじであるという、少年誌としては異例の試みが大成功を収めました。
「バカを主人公にしたメチャクチャな笑い」をさらに進化させ、「ハチャメチャ」な展開が特徴の作品となりました。
バカボンのパパの代名詞とも言える名言「これでいいのだ!」は、赤塚不二夫の哲学を象徴する言葉として広く知られています。
連載誌の変遷: 少年誌の競争が激化する中で、『天才バカボン』は特定の雑誌に留まらず、短期間で『週刊少年サンデー』(小学館)など、複数の雑誌を渡り歩きました。
2. アニメ化と国民的人気の確立(1971年〜)
テレビアニメ化により、キャラクターは全国的な人気を獲得しました。
アニメ第1作放送開始 (1971年): 1971年9月、初めてテレビアニメ化され(日本テレビ系)、人気はさらに爆発しました。
長期連載: アニメ化に伴い、再び『週刊少年マガジン』へ連載を再開するなど、主要な少年誌やテレビ情報誌などで何度も連載が繰り返され、長期にわたり愛される作品となりました。
メインキャラクターの定着: バカボンのパパ、バカボン、ママ、ハジメちゃんの野原一家に加え、おまわりさん(本官さん)、レレレのおじさん、そして人気を博したウナギイヌなど、強烈な個性を持つ脇役たちが次々と登場し、作品の世界観を確立しました。
受賞: 1972年には、赤塚不二夫氏が本作で文藝春秋漫画賞を受賞しています。
3. 平成、そして深夜アニメへ(1990年〜現代)
赤塚氏の逝去後も、作品は形を変えながら受け継がれています。
複数回のアニメ化: 1975年の『元祖天才バカボン』、1990年の『平成天才バカボン』など、時代と共に何度もテレビアニメ化され、親しまれ続けました。
平成の時代: 1980年代後半から1990年代初頭にかけては、『コミックボンボン』(講談社)などで、『平成天才バカボン』のタイトルで連載が行われました。この時期は、赤塚氏の公認のもと、フジオプロのスタッフによる代筆による連載も多く見られます。
赤塚不二夫氏の逝去 (2008年): 作者の赤塚不二夫氏が逝去した後も、作品の持つナンセンスな精神は受け継がれています。
『深夜!天才バカボン』 (2018年): 2018年には、大人をターゲットにした深夜アニメとして『深夜!天才バカボン』が放送され、原作の持つ過激さや現代の時事ネタを取り入れたパロディ要素が話題となりました。
まとめ
『天才バカボン』は、ナンセンス・ギャグというジャンルを確立し、作者の「これでいいのだ!」の精神と共に、世代を超えて愛され続ける国民的ギャグ漫画です。連載誌をたびたび変えながらも、そのハチャメチャで自由な作風は、日本の漫画史に大きな影響を与え続けています。